安全と安心について
|§1. まず、はじめに
日本での普通の生活ではあまり耳にしませんが、ててぺろのまわりではケミカルという言葉を『人工的に作られた化学物質』という意味でよく使います。バイク、自動車といった乗り物関係や住宅、家電、衣類にもケミカルは必要なもので、食品関係にも使用されていますね。
まずこの分野で取り上げておかないといけないのは、ててぺろ的にはやはり安全というキーワードです。第一話目なのでケミカル(化学物質)についての安全、そしてそれが与える安心とはどんなものかについて、ててぺろ的考察をしておきたいと思います。

|§2. 化学物質に関するレギュレーション(規制)について
便利なケミカル(化学物質)がある反面、人体に有害なものも存在していて、それらについては地域、各国での安全基準として使用に関するレギュレーションが制定、運用されてます。
このレギュレーションですが、地域、各国で差異はあるものの、グローバル化が進んでいる昨今、各企業様の実情としてはすべてを包括して対応している状況ではないかと思います。つまり自社製品が世界のどこででも使用される可能性があるので、できる限りすべての使用規制に対応していく方向にならざるを得ないです。その中で一番進んでいる?と思われるのはEC(欧州連合)で、代表的なREACH(化学品の登録、評価、認可及び制限に関する規則)、RoHS指令はマストでの対応となります。簡単にREACHとRoHSの目的と化学物質への規制方法に焦点をあてて説明しておきます。

〇 REACH規制
人の健康、環境の保護だけでなく、欧州化学産業の競争力・維持向上などを目的としたレギュレーションです。EU域内における化学物質の総合的な登録(届出)・評価・認可・制限に係る化学品規則(2007年6月1日に発効)です。この規定では化学物質自体の安全性カテゴリーとして、認可対象物質、制限対象物質を制定してます。この認可対象物質、名前のとおりECHA(欧州化学品庁)の認可を取れば使えますが、認可を取るのは非常に困難なため、実質使用不可物質です。一方、制限対象物質はそれぞれ制限条件が付与されていますが、この制限条件に抵触しなければ使用できます。
また認可対象物質は、高懸念物質(SVHC)としてリストアップ(Candidate Listと言われてます。)された候補から、特定されていきます。そのため実際の状況としては、高懸念物質としてリストアップされた段階で代替化学物質の検討スタート、状況により切り替えていきます。
この高懸念物質ですが、パブリックコメント(一般の方や企業などから意見を募る)をECHA(欧州化学品庁)が募り、定期的に更新されてます。そうです、どんどんSVHC、認可対象物質が増えてきているということですね。現在(2025年2月)、第32次で247物質がリストアップ(ECHAのHPご参照ください。:Candidate List )されてて、認可対象物質は59物質(Annex XIV )です。
※RAECH規則の全体の概要、流れは厚生労働省 欧州REACHについてP7をご参照ください。

〇 RoHS指令
EU域内で取引を行う電気・電子機器が対象で、有害物質の使用制限をすることでリサイクルを容易にし、埋立てや焼却処分時に人や環境に影響を与えないことが目的です。特定有害物質としてはCd、Pb、Cr6+、Hg、ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、フタル酸エステル4種の合計10物質が規定されてます。これが0.1wt%以下(Cdは0.01wt%以下)でないといけません。

|§3. 実際の化学物質の管理(成形品・製品)について
EUでは他にもPOPs条約、USではTSCA、カリフォルニア州のプロポジション65(Prop 65)、日本でも化審法と化学物質にかかわる規制は多々あります。これらはレギュレーションなので、一つも漏らさずに対応しないと罰則を受けることになります。では実際、この多岐にわたる規制をどう対応しているかといいますと、自動車産業界ではIMDS、家電・電気電子部品業界ではchemSHERPAといった化学物質に関わる情報伝達システムを利用しております。
これらのシステムは川上企業(化学品、素材産業)から、川中企業(部品、加工業界)そして川下企業(組立、最終製品)というサプライチェーン間の化学物質に関わる情報伝達をオンラインで実施できます。また各種の化学物質規制をデータベース化しており、入力した化学物質がどの規制に該当しているか or いないかを判別するのです。 そのため、いろんな化学物質規制の更新情報が来ても、環境対応窓口のご担当様たちはうろたえる必要はないのです。。
こうやって化学物質情報を受け渡し、規制に問題ないことを確認されながら、製品は作られ、販売されていってます。

|§4. 実際、安全になっている?
EUやUSといった海外の化学物質規制でも、グローバル化が身近なものになってきているため日本の製造現場、その周辺等へ影響が及んできていることはご理解いただけたかと思います。この化学物質規制は、具体的にいうと発がん性、変異原性、生殖毒性等の人体影響をもつ化学物質から人を保護、また難分解性、生物蓄積性、内分泌かく乱物質(環境ホルモン)などの環境影響が大きい化学物質の使用を制限・禁止して環境を保護していくのが目的となってます。社会的、経済的影響を考慮しながら規制対象を更新・追加していると思いますが、少しづつはててぺろの周りも安全になってきてると思います。安全はあくまで相対的な判断しかできないものと、ててぺろは考えておりますので、より安全になっていれは正解と思っています。さらに安心へつなげていけるよう、一企業人として、また一消費者としてきちんと向き合っていきましょう。
PS. 健康面や環境面への恩恵よりも、使ってる化学物質に規制がどんどんかかって来て、仕事がどんどんやり難くなって行く事の方が身近に感じる・・。そんなててぺろがいる・・。
